TREATMENT

難聴・耳鳴・補聴器・顔面神経麻痺について

当専門外来では、耳科学を専門とする医師により、難聴・耳鳴・顔面神経麻痺などの症状でお困りの患者さんの診療を包括的に行っております。難聴・耳鳴・顔面神経麻痺は、いずれも多様な病態により引き起こされます。最新の画像診断機器・各種機能検査により、それぞれの患者さんの病態を正確に把握した上で、各病態に合わせた最善の治療方針、あるいは最善の人工聴覚機器の装用をご提案いたします。

診療日
金曜日:13時半から16時半
補聴器外来は月・水・金の13時半から16時半

受診の流れ

当院受診には近医からの紹介状が必要です。初診の患者さんはまず午前中の一般外来を受診していただきます。その後、予想される病態に応じて必要と考えられる各種精密聴力検査やCT・MRIなどの画像検査を受けていただいた後に当専門外来を受診していただきます。例外として、突発性難聴、顔面神経麻痺などの早期治療が必要な病気では、初診時より治療を開始し、途中から当専門外来にて診察しています。

初診予約
03-5803-4655
耳鼻咽喉科外来直通
03-5803-5682

当専門外来の特色

当院受診には近医からの紹介状が必要です。初診の患者さんはまず午前中の一般外来を受診していただきます。その後、予想される病態に応じて必要と考えられる各種精密聴力検査やCT・MRIなどの画像検査を受けていただいた後に当専門外来を受診していただきます。例外として、突発性難聴、顔面神経麻痺などの早期治療が必要な病気では、初診時より治療を開始し、途中から当専門外来にて診察しています。

経験豊富なベテランスタッフによる確かな医療

  • 耳科学を専門とする経験豊富なベテランスタッフが診療に当たります。当専門外来スタッフの多くは日本耳鼻咽喉科学会専門医、かつ日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医です。また、2020年1月より日本耳科学会認定耳科手術指導医制度がスタートし、全国で92の認可研修施設、142名の耳科手術指導医が認定されましたが、当科では1認定施設では全国で最多となる3名が耳科手術指導医に認定されています。
  • 当外来終了後にはスタッフ全員が集まり、診断・治療方針・手術適応につき慎重に検討を行っております。

各種聴覚検査、最新の画像診断技術、血液検査などを駆使した正確な診断

  • 難聴・耳鳴・顔面神経麻痺の原因は多岐に渡ります。各種聴覚検査、画像診断、血液検査などを組み合わせて正確な診断を行います。
  • 病態、および病変部位の把握のために当科で行っている主な聴覚検査:チンパノメトリー検査・耳小骨筋反射検査・耳音響放射検査・耳管機能検査・語音聴力検査・自記オージオメトリー・SISI検査・ピッチマッチラウドネスバランス検査・聴性脳幹反応検査・聴性定常反応検査・乳幼児聴力検査(聴性行動反応検査・条件検索反応検査・遊戯聴力検査)など。
  • 難治性、原因不明の難聴・耳鳴・顔面神経麻痺の中には全身疾患が原因となっていることがあります。そのような場合には、特殊な血液検査が診断の手がかりとなることもあります。
  • 先天性の難聴や原因不明の進行性の難聴では遺伝子検査により病態が判明することがあります。当科では保険診療での「遺伝学的検査(先天性難聴)」に加え、信州大学との共同研究として、より詳細な難聴の遺伝子検査を行っています。
  • 当外来終了後にはスタッフ全員が集まり、診断・治療方針・手術適応につき慎重に検討を行っております。

突発性難聴に対する高気圧酸素治療、鼓室内ステロイド注入療法

  • 突発性難聴に対し有効性が確実に証明された治療法はありません。一般的には、ステロイド剤、血管拡張剤、代謝賦活剤やビタミン製剤などを点滴もしくは経口で用います。当科においても上記の治療を基本としていますが、難聴が高度な症例や、難治例に対しては、初期治療あるいは救済治療として高気圧酸素治療や鼓室内ステロイド注入療法を行っています。

最善の人工聴覚器の提供

  • 慢性的な耳漏をみとめる方、先天性の外耳道狭窄・閉鎖症の方、高度難聴の方など、通常の補聴器での対応が困難な患者さんには、通常の補聴器以外に以下に示したような人工聴覚器の適応の有無つき慎重に検討します。
  • 当科では現在保険収載されている全ての人工聴覚器(人工内耳、残存聴力活用型人工内耳、人工中耳VSB、骨固定型補聴器BAHA)の手術実績があり、幅広い選択肢の中から各患者さんの病態に合わせた最善の人工聴覚器を提案します。
  • 2001年に本邦初となる骨固定型補聴器(BAHA)埋込術を施行しました。
  • 成人に対する人工内耳埋込術は年々増加しており、近年は都内屈指の実績を誇ります。
  • 人工内耳は、世界の3大メーカーであるコクレア社、メドエル社、アドバンスド・バイオニクス社の複数のモデルから最適なものを選択できます。
  • 適応のある患者さんには、健康保険にて両耳への人工内耳埋込術を施行しています。

人工聴覚機器装用者への丁寧なリハビリテーション指導

  • 人工聴覚器は、術後の機器の調整、およびリハビリテーションが重要です。経験豊富な専属の言語聴覚士が一人ひとり丁寧に十分な時間をかけて診療にあたります。
  • 補聴器適合には公益財団法人テクノエイド協会認定の認定補聴器技能者が当たります。
  • 補聴器適合が不十分であることが疑われる患者さんには、積極的に日本聴覚医学会が作成した「補聴器適合検査の指針(2008)」に則った補聴器適合検査を行っています。

スタッフ紹介

症状とおもな疾患

多彩な疾患/病態により似たような症状が引き起こされるため、正確な診断には耳科学を専門とした医師の豊富な経験・知識に加え、各種聴覚検査、画像検査、血液検査、遺伝子検査などが必要となります。中耳炎は主に「人工聴覚器・中耳炎外来」で診察しているため、以下のリストには記載していません。

難聴・耳鳴・耳閉塞感など

  • 急激に発症:突発性難聴、急性低音障害型感音難聴、メニエール病、聴神経腫瘍、音響外傷、外リンパ瘻など
  • 緩徐に進行、あるいは進行なし:特発性両側性感音難聴(原因不明の両側性感音難聴)、遺伝性難聴、聴神経腫瘍、老人性難聴、中耳炎術後症、耳硬化症、騒音性難聴など
  • 変動:急性低音障害型感音難聴、メニエール病、外リンパ瘻、対側型遅発性内リンパ水腫、ステロイド依存性感音難聴、機能性難聴(心因性難聴)など
  • 生まれつきの難聴で進行なし:先天性難聴、遺伝性難聴、内耳奇形、耳小骨奇形、外耳道閉鎖症

顔面神経麻痺

ベル麻痺(原因不明)、Ramsay Hunt症候群(耳性帯状疱疹)、顔面神経鞘腫、側頭骨骨折、ANCA関連血管炎、サルコイドーシス、白血病、メルカーソン・ローゼンタール症候群

代表的な疾患の治療例

多彩な疾患/病態により似たような症状が引き起こされるため、正確な診断には耳科学を専門とした医師の豊富な経験・知識に加え、各種聴覚検査、画像検査、血液検査、遺伝子検査などが必要となります。中耳炎は主に「人工聴覚器・中耳炎外来」で診察しているため、以下のリストには記載していません。

突発性難聴

  • 耳の病気を煩ったことがない方が、あるとき突然、片耳の難聴になる病気です。多くの場合には耳鳴りを伴い、約半数の方が発症早期にめまいを自覚します。
  • 原因として内耳への血流障害やウイルス感染などが推定されていますが、確実な原因は分かっていません。臨床的には、急性発症の感音難聴のうち、各種の検査を行っても原因が分からないものを突発性難聴と呼んでいます。よって、初診時に突発性難聴と診断されても、のちの検査で原因が分かれば、他の診断がくだされることもあります。実際、突発難聴の数%においてMRI検査により聴神経腫瘍が見つかります。
  • 治療としては、ステロイド剤、血管拡張剤、代謝賦活剤やビタミン製剤などを点滴もしくは経口で用います。当科では難聴が高度な症例や、難治例に対して、上記治療に加えて高気圧酸素治療や鼓室内ステロイド注入療法を行っています。
  • ほとんどの方で1ヵ月以内に聴力は固定し、治らなくなってしまいます。有効性が確実に証明された治療法はありませんが、発症1ヵ以内に可能性のある治療を試みているのが現状です。

急性低音障害型感音難聴

  • 多くはストレスや睡眠不足などを契機として、急に片耳あるいは両側の耳が詰まったように感じる病気で、ときに軽いめまい感を伴います。純音聴力検査では、低音域を中心とした感音難聴を認めます。
  • 原因は不明ですが、内耳に水ぶくれ(内リンパ水腫)が生じることが原因病態と考えられています。内耳造影MRIという特殊なMRI検査により内耳の水ぶくれが確認できることがあります。
  • 突発性難聴と異なり、難聴は変動したり、再発したりします。両耳に発症することが多いのも本疾患の特徴です。まれに、メニエール病に移行することがあります。
  • 症状改善のためには、ストレスの回避、適度な運動、規則正しい生活、十分な睡眠の確保などが重要で、多くは自然経過で症状改善します。
  • 有効性の証明された治療薬はありませんが、一般に代謝賦活剤、ビタミン製剤、利尿剤、ステロイド剤などを用います。

音響外傷

  • ライフル射撃音、コンサートの音響、交通事故時のエアバッグ展開時の音響など、強大音に暴露したのちに、難聴や耳鳴が生じる病気です。
  • 治療薬として、ステロイド剤、代謝賦活剤、ビタミン製剤などを使用します。

外リンパ瘻

  • ダイビング、飛行機、咳き込み、鼻かみ、いきみなど、髄液圧と中耳圧の急激な変化により外リンパ液が中耳に漏れ出して発症すると考えられており、難聴・耳鳴・めまいを生じます。
  • 発症時にはじけるような音(pop音)を自覚したり、水が流れるような耳鳴を自覚したりすることがあります。
  • 突発性難聴と異なり、難聴はときに変動します。
  • 治療は、まずは頭部から上半身を30°程度上げた状態で安静を保ちます。突発性難聴に準じてステロイド剤を投与することもあります。上記にて症状が改善しない場合、難聴が変動する場合、めまいが治まらない場合などは、手術により外リンパ液の漏れを止めること(内耳窓閉鎖術)により症状が改善することがあります。

メニエール病

  • メニエール病は、回転性(ときに浮動性)のめまいを反復する病気ですが、耳鳴・難聴・耳閉塞感・聴覚過敏などの聴覚症状も合併します。
  • 内リンパ水腫が病態と考えられていますが、原因は明らかになっていません。
  • 聴覚症状のみのメニエール病を蝸牛型メニエール病、めまい症状のみのメニエール病を前庭型メニエール病といいます。
  • 難聴は、初期には低音域が障害されますが、発作を反復すると進行していきます。時間とともに逆の耳にも難聴が生じること(20-30%)があります。
  • 治療として、規則正しい生活(睡眠不足の回避)、ストレスの軽減などの生活指導を行います。薬物治療として、利尿剤、血流改善剤、ビタミン剤、ステロイド剤、抗めまい剤、安定剤などが用いられます。上記の生活指導、薬物治療でめまい発作が緩和されない場合は中耳加圧治療を試みます。中耳加圧治療を行っても発作が緩和されない場合は、内リンパ嚢開放術、ゲンタマイシン鼓室内注入、あるいは前庭神経切断術などの適応を慎重に判断します。

遅発性内リンパ水腫

  • 一側の高度難聴が発症してから、数年〜数十年の後に内リンパ水腫がどちらかの耳に生じ、めまいや難聴をきたすものです。
  • 高度難聴側に内リンパ水腫が生じる同側型遅発性内リンパ水腫と、非高度難聴側に内リンパ水腫が生じる対側型遅発性内リンパ水腫とがあります。
  • 治療は、メニエール病治療に準じて行います。

機能性難聴(心因性難聴)

  • 聴覚経路に障害がないにもかかわらず、純音聴力検査にて難聴を示すものです。
  • 機能性難聴の多くは心因性難聴であり、心理的要因により発症します。
  • 小児例では学校関係(友人関係、音楽の授業など)や家庭関係(両親の離婚など)など、成人例では職場での不適応、夫婦(男女)間のもつれなどが背景にある場合があります。
  • 耳もとで大声を出されること、耳を叩かれること、交通事故にあうことなどが誘因になることもあります。
  • 診断には、聴性脳幹反応(ABR)、耳音響放射(OAE)、自記オージオメトリーなどが有用です。
  • 心理的要因が明らかな場合には、問題の解決が重要です。
  • 必要により、心療内科医、精神神経科医(小児神経精神科医)と連携して治療を行います。

特発性両側性感音難聴

  • 原因不明に、両側の難聴が進行する感音難聴です。
  • 各種聴覚検査や画像検査のほか、定期的に聴力検査を行います。
  • 急激に難聴が悪化することがあり、その際には突発性難聴に準じた治療を行います。
  • 両耳の重度難聴では、人工内耳手術が有効です。

先天性難聴

  • 新生児650人に1人が、高度難聴児として産まれてくると言われています。両耳の高度難聴児では、発達やコミュニケーション能力に支障をきたすため、早期発見、早期療養が必要となります。
  • 先天性難聴の50%以上が遺伝性難聴であり、残りは先天性風疹症候群、サイトメガロウイルス感染などの環境要因が関与します。
  • 当施設では乳幼児聴力検査、聴性脳幹反応(ABR)などによる精密聴覚機能検査を行っています。

遺伝性難聴

  • 遺伝性難聴は、難聴以外の症状を伴う症候群性遺伝性難聴と難聴を主症状とする非症候群性遺伝性難聴に分類されます。
  • 非症候群性遺伝性難聴は遺伝の形式により、DFNA(常染色体優性遺伝形式)、DFNB(常染色体劣性遺伝形式)、DFNX (X連鎖性)に分類され、それぞれ報告順に番号がつけられています。ミトコンドリア遺伝性のものもあります。
  • 当科では、遺伝子診療科と連携して、採血した血液を用いた難聴の遺伝子診断を行っています。保険適応の遺伝子診断のほか、信州大学との共同研究として追加の遺伝子解析もおこなっています。この追加の遺伝子解析をご希望される場合は、本人の他、ご両親からの採血もお願いしています。

聴神経腫瘍

  • 聴神経腫瘍は、大多数でバランスをつかさどる前庭神経に生じる良性腫瘍です。初期には、片方の耳の難聴・耳鳴りやめまいをきたしますが、腫瘍が大きくなると顔面神経麻痺、顔面の知覚低下などが生じることがあります。
  • 治療方針は、年齢や腫瘍の大きさにより左右されますが、大きな腫瘍でなければMRIによる定期的な経過観察を行います。
  • 定期的な経過観察にて腫瘍が増大する場合には、脳神経外科と連携し、手術的治療や放射線治療(ガンマナイフ)をおすすめしています。

老人性難聴

  • 加齢に伴う感音難聴は、一般に老人性難聴と呼ばれています。
  • 一般に聴覚の加齢性変化は聴力検査上50歳頃から明らかになりますが、難聴の発症時期、進行の程度には個人差があります。
  • 多くの場合、聴力検査では左右差のない高音域の感音難聴を示します。
  • 加齢性難聴を回復させる治療は今のところありません。騒音による影響は加齢変化に加わりますので、大音量での音楽鑑賞や騒音環境下での生活をできるだけしないようにすることが重要です。また、高血圧、糖尿病などにより加齢性難聴は悪化するとされていますので、日頃からの健康管理も重要です。
  • 両耳の聴力が40dBより悪くなれば補聴器をおすすめしています。補聴器装用の前には、ことばの聴こえの検査を行い、ことばをどれだけ聴取できるかを調べる必要があります。

顔面神経麻痺

  • 片方の顔の 動きが悪くなり、口から水や食べ物がこぼれる、眼が閉じないなどの症状が起こります。
  • 顔面神経麻痺の半数以上を占めるのが原因不明の顔面神経麻痺(ベル麻痺)です。
  • 耳性帯状疱疹(ハント症候群)では、顔面神経麻痺のほか、外耳道や耳介の発疹・耳の痛み・耳鳴・難聴・めまいなどが生じます。神経に潜伏する水ぼうそうウイルス(帯状疱疹ウイルス)の再活性化が原因とされています。
  • これらの病気では、周囲が骨に囲まれている顔面神経に浮腫(むくみ)が起こるため、神経に十分な血液が届かなくなり、神経の変性が起こることが麻痺につながると考えられています。
  • 症状が出現した場合には、早期の治療が必要です。耳性帯状疱疹の方が、一般に特発性顔面神経麻痺よりも予後が不良とされています。
  • 急性期の治療には、ステロイド剤、血管拡張剤、代謝賦活剤、ビタミン製剤のほか、必要により抗ウイルス薬を用います。
  • 当施設では、発症後7〜10日以降に誘発筋電図検査(ENoG)を行っています。ENoGにて正常側と比べ患側の電位が10%以下の場合には予後不良と考えられ、麻痺の程度が完全麻痺の状態であれば手術(顔面神経減荷術)をお勧めしています。